「新耳袋 第十夜」

 読了・一夜完読。
 完読はしましたが、残念ながら怪奇現象は起こりませんでした。それに残念ながら、好みの話も少なかったです。
 特に最後の映画撮影に纏わる話。アレはシリーズの最後だと言うのにがっかりでした。これが初めてではありませんが、最後の最後に著者の体験談を持ってくるとは。しかも語り口すら変えて。「新耳袋」の編集スタイルをぶち壊されたようで、なんとも納得できませんでした。内容も小粒だしね。第四夜のようにスケールの大きな怪奇ならば納得は出来るのですが……後書きに「戻ってくる」てなことを書いてますが、言い訳にしか聞こえませんでしたよ。
 単に「著者自身の体験談で締めたかった」という虚栄心によるものではないかと邪推してしまう。
 ま、ソレを言うなら「編集者」じゃなくて「著者」として出版されている時点で、なんとも納得いかないのではありますが。


 このシリーズ、5冊目くらいが一番楽しめたかなぁ。その後はマンネリというか、編集スタイルが変化してしまったような印象でした。いや、まあ、うろ覚えな記憶による印象ですが。


 この巻を振り返って好きだった話は第69話の「たぬきの剥製」。こういうクスリと笑える怪奇が大好きです。他に幾つかゾクリと鳥肌が立つ話もありました。
 シリーズ全体を振り返ると印象に残っているのは、女性を布団後と抱え上げた幽霊(妖怪?)が「重うてかなわん」と呟く話。やはり笑える怪奇が私は好きなようです。
 そういった話を体験談として収録してくれる本というのは少ないので、新耳袋がこれで最後というのは、やはり寂しくはあります。