「暗黒童話」(著者:乙一)

 読了。面白かった!
 有名なこの作品をなぜ今まで読んでなかったかというと、理由は二つあって、一つはこれ読んだら乙一の作品をほとんど読み終えてしまうからです(笑
 そしてもう一つは、チラッと読んだ冒頭の鴉と少女の童話……導入部分が面白くなかったから。乙一の作品を読んで失望したくはなかった。
 でも読み終えた今はそれが杞憂だとわかりました。うん、これは乙一だ。私の好きな乙一だ。
 あらすじは……小さな事故で左眼を失った少女、菜深。ショックで記憶喪失になった彼女は、人々の記憶にある「菜深」と今の「自分」との差異に苦しむ。やがて左眼の移植手術がされ、視力が戻った彼女が見たのは、その眼球の元の持ち主・和也の「記憶」だった。眼球の記憶しか拠るべきものを持たない少女は、やがて和也を死に追いやった殺人鬼を探し始める……てところでしょうか。
 奇しくも「パイロットフィッシュ」と同じく、「記憶」がテーマの一つとなっています。
 なんつうか、叙述トリックも超常的なところもいつもの乙一です。だから取り立てて言うことなし! 個人的には乙一にしては珍しいな、と思うところも合ったのですが、他の短編にそういう例が無いわけじゃないし……
 とにかく堪能いたしました。ぐっど。