「春季限定いちごタルト事件」(著者:米澤穂信)

 読了。いや〜面白かった!
 あらすじは……中学卒業高校入学とともに「小市民」である事を目指す小鳩君と、志を同じくする小動物的女生徒小山内さん。でも周りの状況はそれを許してくれなくて……というお話。全然あらすじになってねーよ! でもそういう、日常的なミステリー小説です。例えば「どうやって容器を使わずにココアを作ったのか?」とか、「なくなったポシェットはどこにあるのか?」とかそういった事を推理するミステリーなのです。それに登場人物たちのキャラ的魅力を絡めて押し出しています。
 全部で五つの章に分かれているのですが(プロローグ・エピローグを除く)、その中では上記している「美味しいココアの作り方」が一番好きです。導き出された答えが「ああ〜! 確かにこういうことってあるよな〜っ!」という非常に微笑ましい日常で、健吾のキャラクターに合っている上に、この難解な答えに頭を悩ませて唸っていた主人公やヒロインも滑稽で面白かったのです。上手い話だな、と。
 続いて続編を読もうとは思いますが、キャラクタの裏を表し切ってしまった以上、次作は違う切り口を見せられるのか、それともただのキャラモノと成ってしまうのか。期待と不安と綯い交ぜです。