「七つの黒い夢」

 読了。7人の作者による短編集。
 「黒い夢」とはあるものの、別にホラーではありません。ホラーっぽいのは2作だけです。不可思議な話を集めて「黒い夢」と表現してるようですが、ちょっと肩透かしです。
 全体的にちょっと小粒なのですが、7作の中で好きだったのは「百物語」と「桟敷がたり」、「哭く姉と嘲う弟」かな。
 「百物語」は物語そのものはあまり好きじゃありません。パターン過ぎる。おまけにヒロインの秘密と言動とがちぐはぐなんですよね。それを吹き飛ばすようなパワーも無い。ただ百物語を蝋燭の代わりに部屋の明かりを用いて行うアイデアが面白かった。これ、学生時代に女の子を口説くときに使えると思いますよ(笑)。作中ではしきりに「下心は無い」ことが強調されていますが、ヒロインの立場からしたら狙われているとしか思えんだろ(笑)。もうココが私的にバカ受けでした。
 「桟敷がたり」「哭く姉と嘲う弟」は解釈可能な範囲の不思議さが好きです。ただしもう少し直接的にしてくれたほうがずどんと響いてきたと思う。
 乙一の「この子の絵は未完成」も悪くはなかったんですが、「黒い」を期待していた初っ端の作品だったのが残念。
 「赤い鞠」は前述の2作品と逆に不思議な話をストレートに答えに出しすぎてしまったのががっくり。ただ雰囲気は好きでした。「
 「天使のレシート」。7作品の中で一番嫌い。ただし、7作品の中で一番「黒い」話です。黒い部分は好きなんですが、天使だのなんだのキャラクターに設定を語らせている部分がどうにもね…。
 「10月はSPAMで満ちている」。題名は好きなんですが、ミステリーもキャラも中途半端だったかなぁ。ほのぼのした雰囲気はグー。
 ま、そんなところでした。
 読み終わった際の満足感はそこそこあったので、息抜きとしてはちょうどいい本だと思います。ちょっとした気分転換の軽い読書にオススメ。