ひぐらしのなく頃に

 祟殺し編冒頭で出てくる、拷問の挙句殺された女性の死体。
 綿流し編の莉花やおりょうの死体のように隠すことも出来るのにわざわざ流したことから、大谷が言っていたように、その死に様を人に知らせる為だった……と考えるのがやはり自然です。ではあれは誰が誰に対する見せしめとして川へ流したものなのでしょうか。
 単に麻薬関係での見せしめとは思い難いです。それならば拷問せずにサクッと殺して流してもよい。手間暇かけて拷問し、警察にその拷問器具等の情報・手がかり(=祭りの手がかり)を与えてまでしなければならなかった「見せしめ」とはなんなのでしょうか。
 あの発見状況から連想するのは、やはり綿流し。祭り関係者……しかも綿流しが腸流しだと知っていた人間(つまり相当深い事情まで知っている人物)に対するメッセージだととれる気がします。
 それが鉄平だとは考えにくい。噂では間宮律子は薬と上納金に手をつけたという話ですが、TIPSを読む限りでは鉄平はそれとは無関係の様子。リナが殺されたことを知らずに、しばらく街中をうろうろしていたようですから。しかもこの殺人が鉄平を呼び寄せるためのものだとしたら、何のためだというのでしょう?
 5年目の事件の被害者が莉花だとすると、鉄平が主人公に殺される必要はないわけです。唯一関係するとしたら、養女沙都子のラインから莉花に繋がる可能性ですが……莉花を一人きりするため、或いは何かしらの理由があるのかもしれませんが、その方向では個人的には考えにくい。
 過去4年間の祟りでは、他に家人がいようといまいとお構い無しに事件は起きているのですから。
 では莉花殺しにおける「鬼隠し」の被害者として呼び寄せられたというのは?
 これも考えにくい。今までの「鬼隠し」は被害者の縁者、親しい人間が選ばれてますから。
 さらに祟殺し編で沙都子が莉花の死に影響を与えるような行動をとっているかというと、そうとも考えにくい。 
 そうなると「祟殺し編」は、過去4年にわたってオヤシロ様の祟りを演出してきた人物にとって、イレギュラーな事件だったんじゃないかと思うのです。暇潰し編での莉花の予言どおりに、しっかりと莉花は殺されるわけですが、現実には莉花以外にも富竹・鉄平が殺されてしまう。それは明らかに「予定」から外れるのですから。
 だから祟殺し編のテキストの大部分を割かれている「沙都子と圭一と鉄平」の殺人劇は、実は「ひぐらしのなく頃に」全体の真相とはかけ離れた物語だと思うのです。ただ、それが結果的に「5年の連続怪死事件」に影響を与えてしまって、入江の死や大谷の行方不明を引き起こしてしまう。そういった真相への「ヒント」だと思っているんですよね。


 つまり、冒頭の女性の死体は、5年連続の怪死事件を演出するトリガーのひとつだった(或いは演出に万全を期すための、防御策のひとつだった)。しかし結果として鉄平が村に戻ってきてしまい(ひょっとしたら女性が鉄平を養っていたのは、自分の命の保障として、或いは何かの情報を引き出せると踏んだため?)、予定通りの「雛見沢村連続怪死事件」を起こす裏で、イレギュラーな「北条鉄平殺人事件」が起こることになってしまった。
 それが最終的に「雛見沢村連続怪死事件」の結果を狂わせることになり、入江や大谷、それどころか大災害を引き起こし、村人全てを殺すことに……


 という基本ラインじゃないかな、と考えてます。


 では結局、誰に対する見せしめだったのでしょう?
 園崎系の若頭の店で働いていた……ここらへんが、重要かも。リナの裏に男がいた(鉄平以外の、です)としたら、その男はいったい誰だったんでしょうね。
 ふと思いましたが、「見せしめ」の相手は行方不明の悟史だったり……いや、それはないか、な?