「六番目の小夜子」(著:恩田陸)

 読了。
 新潮文庫の毎年恒例、夏の「YONDA?」で何となく手にとって購入。んでもって昨夜読みました。ONDAにYを加えればYONDAだな、うんネタに出来る……なんて考えて購入したわけではない。断じてない。


 で、感想ですが面白かったです。ただし、読み終わってみると何も心に残るものがない……
 おそらくこの小説の見るべきものはミステリー要素でもホラー要素でもなく、高校3年生の一年間、その一度しかない「青春」だったと思うのです。
 しかしそれだけに、物語としての答えが出るものではない。素敵だと感じる内容やアイデアなので小説として非常に面白いと思います。ですがそれを読んで湧き上がった感情は、私自身の懐古趣味によって成り立っている面が多分にあり、すでに私の中で積み上げられていた経験に照らし合わせて浮かんだものでしかないわけです。
 元からあったものを見せ付けられても、それは新しい思い出とはなりえない。小説の内容を思い出すのではなく、自分の思い出を思い出すほうへと思考が流れてしまうから。少なくとも私はそう。
 だから心に何も残らなかった……そう感じたんじゃないかと思います。
 青春小説というジャンルは元からそういうものだし、その上で語るならばいい物語だったと思います。でも個人的には、単なる懐古で終わらずに、さらに私の中で読書の思い出として残るような新しい感動を与えて欲しかったな、と思いました。