「フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人」(著者:佐藤友哉)

 読了。
 あらすじは……主人公・鏡公彦は狂った家族を持つ大学生。その彼の唯一正常な妹が自殺をする。そして彼の元に一人の男が現れ、一本のビデオテープとメモを渡す。映っていたのは妹のレイプシーン。書いてあったのは、レイプ魔の娘達のスケジュール表。連続少女殺人犯・突き刺しジャックが騒がれる中、公彦は妹の仇を討つべく少女達の拉致監禁を企て始める……というもの。
 私の趣味には合わない話でした。読んだのをちょっと後悔。
 こういった物語は、今まで読んだ記憶がちょっと見あたら無い。語り口も珍しく、斬新だと思います。でも結果的にそれが私には合いませんでした。あまり語りたくないなぁ。
 エンターテイメントとして書かれている物語の、商業的な部分にケチをつけるのは的を外してると思いますし、作者も7:3ほどの割合で狙って書いてるのだと思います。でも、根本的に話が終結していないどころか、私の目には「狂」を逃げ道として様々なもののはけ口として書かれた物語としてしか映らず、不満でした。主人公が破滅することを描くのはよろしい。自業自得。風刺的。しかし「主人公の物語」以外での罪は全く扱われないのでしょうか?
 それを描くつもりがないのならば、そもそもこんな設定よしなさいよ、と。
 この作品のコンセプトを推測すると、おそらくそれで間違いはないのでしょうけれど、それこそが私の考えと大きく外れてしまっていると、まあ、そんなわけです。
 正直に言うと私の従兄弟が誘拐・殺害されているので、主人公の拉致監禁劇を中心に据えているのにその描かれ方が浅薄であり、「紳士的」だの評されたりしている点に非常に頭にきているわけです。主人公を許す妹にも、悲劇を避けない姉にも。それをオチにもってくるな。登場人物が全員狂っているからこそだとかそういう問題ではない。
 エンターテイメントなればこそ様々な罪の描かれ方と裁かれ方がありますが、この話は私が承服しかねるモノでした。上手く冷静に言えないけれど。