「オーデュポンの祈り」(著者:伊坂幸太郎)

 読書中。現在96ページ。
 なんというか、不思議な作品です。まだまだ序盤なので内容に関してはなんとも言えないんですけれど、登場人物や世界設定が何となく「不思議の国のアリス」っぽい。ミステリー作品のような気がしません。
 読み始めはこの世界が主人公の妄想世界じゃないかと危ぶんだりしたのですが、主人公がリアリティを破棄してこの世界を受け容れると時を同じくして読者たる私自身もこの世界を受け容れられるようになりました。で、一度嵌まり込むとえもいわれぬ楽しさが。この島がどんな世界であるのか、それを遊覧させてくれるだけで今は満足できてしまっています。楽しい。
 もっとも、この後案山子が殺されてしまうのは本の紹介文からも分かるし、島の外では城川と静香とが物語に絡んでくるでしょう。またこの島に足りないものはなんなのか、それが主人公のコンビニ強盗というこの島に来た原因とどう結びつきリアリティを出すのか(主人公がコンビニ強盗したのは、退職後の無為な生活による現実感欠如だったような表現があったような・・・)、そのあたりにも興味津々です。


 ただ純粋な気持ちとしては、“未来を知っているはずの案山子がどうして殺されてしまったのか?”といわれても、案山子だったら逃げも隠れも出来ないだろ、突っ立てるだけなんだから殺されるしかないじゃないか、と考えてる私がいるんですけれど。「どうして」の捉え方が違うのかな? まあ、とにかくこの先に期待です。