「柳生忍法帖(上)」(著者:山田風太郎)

 読了。現在週刊誌ヤングマガジンで連載されている「Y+M」という漫画の原作です。あらすじは……う〜ん、書こうとすると小説の帯に書いてある紹介文そのままになってしまいます。まあ、夫や父や仲間を残虐に殺された7人の美女達。仇は大名・加藤明成とその家来・会津七本槍。ただし相手はそれぞれ恐ろしい武術を体得しており、もとより女の勝てる相手ではない。そこで柳生十兵衛を呼び寄せ、その師事の下で何とか復讐を果たそうとする、というもの。
 私がこれを手に取ったのは、実は漫画が先でした。以前せがわまさきが書いていた「バジリスク」(原作:甲賀忍法帖)が好きだったので、本屋で新装版が出ていたので何となく買ってみたのです。
 私は今まで山田風太郎の小説を呼んだことがありません。私が以前好きでむさぼるように読んだ小説家に菊地秀行がいまして、同作者の「妖魔戦線」や他の話のモチーフやアイデアの元となっている小説家とは知っていたのですが、小学生か中学生のころだかに読んだ忍法帖シリーズの一冊(題名は忘れました)があまり面白く感じなかったのです。とにかく文体が合わず、読みにくかった。
 ちなみに私の姉はこの山田風太郎を嫌っています。曰く、「女性の扱いが前時代的。腹が立つ」とのことです。言われてみれば納得。
 しかし私自身が年を取って文体に対する抵抗感が薄れたので、今回購入して読んでみました。
 ……おう、面白い。登場人物たちの超人的描写は現在のライトノベルやゲームに比べればおとなしいのですが、その分人間くささが出ています。むしろユーモラスに感じるほど。また基本コンセプトとして「か弱い女がなんとかして超人を倒そうとする」という点が面白い。蓋を開けてみれば女性とはいえ充分に超人的な動きをしているのですが、そこはご愛嬌というものでしょう。
 でも……やはり女性の扱いは悪いです。7人全員を十兵衛に惚れさせるのではなく、2・3人にとどめておけばまだ良かったと思うのですが。しかも三人は元人妻じゃん。姉貴には勧められんなぁ。結局は男の助力でことを進めているし。色恋を抜いた女性だけの知恵と力で、ことを成し遂げてもらいたいものです。